今回はY市K区のSさんから質問を頂いたのでお答えしたいと思います。
Q:唐草と安全唐草は何が違うのですか?形状の違いと用途、性能の違いを教えてください。
とのことです。
ご質問ありがとうございました。
結構ハイレベルなご質問です!
ハイレベル、と申しますかマニアックです・・・!
まずは一言アンサーとして
A:唐草と安全唐草は屋根本体を葺く葺きはじめの「スターター」という用途としては同じものです。形状・性能は後述します。
まずは参考資料として過去記事もご覧ください。
さて、唐草と安全唐草(別名捨て唐草)の形状です。
違いは「捨て」部分にあります。
この「捨て」の有無が「安全」か否かの違いとなります。
カテゴリー「雨仕舞を知る」でも度々お話しさせていただいている通り、水は毛細管現象といって狭いところに吸いあがって行く性質があります。
毛細管現象を防ぐのは極めて単純。
毛細管現象が起きる隙間を不連続にする、つまり隙間を作る、それだけです。
このことを「水を殺ぐ」といいます。
安全唐草の「捨て」部分の端部の返しによって空間を作っています。
これによって水が殺がれ、毛細管現象で吸いあがって行くのを止めることができるのです。
では全ての唐草を安全唐草にしたら良いのではないか、ということになってしまいます。
屋根として考えると、まさにその通り!
しかし、安全唐草で作った隙間のおかげで軒先から100ミリ程度のところに必ず筋ができてしまいます。
意匠を優先しますとそれが嫌だ、という意見もあります。
また、こちらの方が重要なことなのですが、使用する部位が大いに関係します。
安全唐草は「屋根」では必須です。
屋根は建物の躯体に直接つながる垂木に葺きますから、水が吸いあがってしまうと建物本体に浸水していってしまいます。
しかし、窓などの小庇、霧除けなどでは、躯体から切り離された屋根状の「飾り」を建物に取り付けたものに対して板金を取り付けますので、ある程度雨漏り性能を犠牲にしてでも意匠に振れるということがあります。
昔の施工を修繕する現場で遭遇しますが、霧除けなどには下葺きの防水シートすら貼っていないこともありますよ。
つまり、小庇・霧除けは屋根形状はしていますが、建築としては屋根としてカウントしていない、「装飾品である」ということでしょうか。
ということでSさん、唐草と安全唐草の違いはわかっていただけましたでしょうか?
回答の方向がズレているようでしたらご指摘のご連絡くださいね!
このように、ご質問にお応えしてまいりますので、どしどしご連絡ください。
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