建築板金で屋根を葺く際、葺きはじめのスターターとなる役物に軒先水切りがあります。
軒先水切りでも、形状によって様々な名称があります。
軒先水切り、唐草、安全唐草、スターター唐草などなど。
役割は、屋根本体の葺きはじめの引っかける部材、スターターとしての役目もありますが、より重要な役目となるのが「水切り」です。
上の絵は家屋の軒先部分を簡易的に断面にしてみたものです。最新のCADソフト「Windowsペイント」を駆使してみました!(笑うところですよ!)
縦長の矩形が壁、斜めの矩形は屋根の下地で、Tが伸びたようなものが水切り(この形状を安全唐草ということが多い)となっています。
さて、この部材で大切な寸法が「a」と書いている部分です。
結論から先に言ってしまうと、最小で12ミリ、できれば22ミリ確保すると安心です。
下の図を見てください
青っぽく描いたのが水の流れと思ってください。
端部で膨らんでいるのはマウスが滑って丸くなってしまった・・・のではありません!
表面張力という言葉はご存知でしょう。水同士が引き合う力です。
そして、界面張力という水と個体が引き合う力も発生します。
これらの張力によって、水同士も引っ張り合いますし、伝う面とも引っ張り合いますので、濡れた表面から離れようとせずさらに端部から裏へも回り込もうとするのです。
垂直方向にもその性格が出ますので、aの寸法が不足すると屋根の裏まで水が登って濡らしてしまうのですよ!
屋根の下地に使用する構造用合板は12ミリのものを使うことが多いですので、水切りのaの寸法を最低12ミリほど確保するとして、水切りの下がりは最低24ミリ必要です。
既製品として販売しているものは30ミリというものが多いのはこのような理由からなのですね。
降雨量の多い地域や風のある土地でより安全にしようと思ったら40ミリ以上のものを作成することになります。
その建物の地域の降雨量分布図など、屋根メーカー各社で資料を用意していますので、一度目を通しておくのも良いかもしれませんね。
屋根の重ね葺きで軒先水切りの下がり寸法をどれだけ取るか迷ったときは、下地の厚み+既存の屋根の厚みを調べて、このaの寸法を意識すれば自ずと最低限必要な下がり寸法がわかります。
屋根材メーカー各社でも重ね葺き用の水切りを用意していますので、寸法が合えばそちらを使用するとよいでしょう。
また材料を手配する材料屋さんに相談すれば最適なものを用意してもらえます。行きつけのプロショップを作ることがプロフェッショナルな仕事の第一歩ですね。
参考になりましたでしょうか。
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