建築板金は建物の躯体を雨から守る「外皮」を作る工事です。

同じく、防水という工事もあります。

両者の違いはどこにあるのでしょうか。

結論から申しますと、例として「レインコート」と「傘や蓑」の違いの違いがわかりやすいのではないでしょうか。
レインコートは中の服を濡らさないよう雨を防ぐ雨具、傘や蓑は形状によって雨を避ける雨具といった感じです。

Bokushi SnowshoeWikipedia 「蓑」より画像転載

 

以下で詳しく説明いたします。

 

まずは防水工事について。

原理を言葉で説明すると、「不透水性の材料の連続面を形成して水を透過させない」のが防水工事と言えます。
ちょっと分かりづらいですね。

「不透水性の材料」とは水を通さない材料です。
防水工事で有名なのはウレタン塗膜防水やFRP防水で、軟性素材をつなぎ目なく塗りつけて「連続面を形成」することで水が入り込むことを防ぎます。プールや水槽に使われるように、本質的に水を溜めることを可能にする工法となりますので、ビルの屋上などのような水平な屋根(陸屋根ロクヤネと読みます)にする場合は防水工事は欠かせません。

しっかりとした施工管理の元で連続面をしっかり密着することで水を通しませんのでこれ以上無い工法のように感じますが、泣き所として使用する素材が有機材料を使うことです。
比較的耐用年数が短く、長期間の使用にはメンテナンスを繰り返す必要があります。
また、万が一連続面が破断して防水層の裏に水が回った場合、水の抜け道や蒸発乾燥することが困難ですので、一度漏水が始まると復旧は大変困難なことになります。

 

対して板金による雨仕舞

雨仕舞とはどのような考え方になっているのでしょう。

端的に示すと「雨水が濡らす部位部材の形態と配置の選択によって表面や隙間の雨水を適切に処理し、不具合の発生を防ぐ」といった表現となります。

漏水の防止のみならず、もし濡れた場合でもその濡れた状態を維持することなく自然乾燥を促すことで、濡れに起因する躯体の劣化の軽減を図るといった、建物システム全体としての機能と考えられます。

なにか隙間があったとしてそれを防水的に埋めてしまうのではなく、そこに雨が掛からないような庇をつけるとか、その隙間自体の寸法や形状を風雨に対して適切なものにすることで、隙間までは侵入させても内部まで透過させない、といったものです。

デメリットとしては、想定する風雨の規模に限界があることです。
通気や伸縮のためにあえて隙間を設けていますので、その許容を超えてしまえば当然内部に浸透してしまいます。そのためにも水を抜く工夫が欠かせないものになります。
また、どうしても凸凹しますので設計者が望む意匠と一致しないということもあります。

しかし、防水のような施工管理やメンテナンスに敏感な有機材料に依存しない分、十分に耐久性のある材料で作られた雨仕舞は長期間の使用に対して最小限のメンテナンスで対応することができます。
材料によらず形態自体で濡らしにくくするという雨仕舞の考えは、長期的に品質が確保できるという強靭性がメリットとなります。

まとめ

以上かんたんですが防水と板金の違い、わかっていただけましたでしょうか。

はじめの例でいうところのレインコートが防水に当たります。
全身を化学合成の生地で覆って、雨から濡れることを防いでくれますが、どこかが破けてしまったり顔の開口部から浸水してしまいますと中に入った水は抜けませんし、夏場は雨濡れは防げても自分自身の汗でビショビショ&ムレムレといった様相で、雨と汗で濡れるのどっちがマシなんだろう?という感じになってしまいますね!最近はムレ防止の透湿防水の生地などありますが、んー、まぁお気持ち程度・・・ですね。

一方の雨仕舞は傘や蓑のように、その形態から傾斜でいなしたり隙間の内部に留めて中に漏らさないようにします。
たしかに想定を超える風雨に対しては浸水することもありますが、多少であれば通気で自然に乾燥するでしょう。
ただ傘はともかく、都会で蓑なんて着ていたら「なにかの撮影!?」と思われるか不審者扱いされてしまいますね(笑)

 

参考になりましたでしょうか。
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参考文献
雨仕舞のしくみ 基本と応用 石川廣三著

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