
建築板金工事をする際に、材料の素材や様々な形状や厚みに対応したり、作りたい形状に合わせて鋏を選ぶことになります。
切る、折り曲げる、取り付けるという建築板金3ファクターのうち、「切る」を担当するのが金切鋏です。
どういったものがあるのか紹介していきましょう
直切
直線を切るのに使います
柳刃
直線や曲線きりなどに活用できる万能鋏です
エグリ
きつい曲線切りや、穴のくり抜きなどに使います
立エグリ
さらに小さい径のくり抜き、鋏を寝かせて使えない所で使います
縦切
成型板を縦に切り裂いたり、平板を長手方向に切る時に使います
ミカヅキ
縦切鋏の曲がりを大きくしたもので、鋏を立てて使えます
新縦切
縦切鋏の裏を削って逃げを取り、鋼板をスムースにかわして切れます
横葺切
横葺き成型板の切断や加工、ハゼの重ね切りや切込み、上下ハゼの横裂きなどに使います
マジック
刃を寝かせて切れます。切り文字やアートカットなど刃を左右自在に回して切れます
直線切
平板を上下に逃がすため、歪みを抑え左右の切り口が平らに切れます
銅板切

刃の厚みを細く仕上げて切断面の歪みを抑え、切った銅板が平らになるよう工夫されています
ハゼ切
Wハゼ切りに絞り込んだ鋏で、ステンレスで折り込まれたつなぎハゼもスムースに切れます
ダクト鋏
厚物の亜鉛鉄板を体重をのせながら片手で切り込みます
その他補足
特殊形状
波板切り、角波切り、リブ波切りなど、凹凸をつけた鋼板には各凹凸に沿った形状の鋏を使用することで、形状を崩さずに切断することができます。
左利き用
左利き用の鋏もありますが、右利き用ほどラインナップが揃っていません。
職人さんによっては右手で鋏を使えるように矯正したり、右利き用の鋏を左手で使えるようにしたりする人もいます。
「ナントカと鋏は使いよう」という過激な言葉があるように、左手で右利き用の鋏を使ったりすることは大変なことです。
刃の鋼
通常品は、安来鋼といわれる刃物に使われる鋼材を使用しています。
たたら製鉄の伝統技術を最新技術によって磨いた鋼です。
さらに切れ味、靭性と錆にくさを求めて、クロムとモリブデン、バナジウムを含んだSLD鋼を使用した鋏が作られました。
最高級なハイス鋼の刃は高速切削工具(ドリルなど)に採用される鋼材で、耐摩耗性、耐疲労性、靭性に優れた鋼材です。
これら全て日立金属株式会社(http://www.hitachi-metals.co.jp/yss/index.html)の安来工場で製造した素材となっています。安来たたら砂鉄製鉄の伝統技術と最新の素材との融合で切れ味鋭い鋏が作られているのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
いきなり全てを揃える必要はありません。
こんなこと言ってしまうと鋏メーカーに怒られてしまうかも知れませんが、平板から自前で役物を作るのでなければ柳刃一丁でも十分仕事になります。
とはいっても作業性は確実に専用の鋏の方が捗るのは間違いありません。
適所でない鋏を使うと、手を擦ったり、切り口で切ったり、無理な手の形で操作するので異常に疲れたりと色々不具合が発生します。
その体験をしてから購入を考えるというのがより実践的で良いのでは無いでしょうか。
また、特に繊細な銅板を扱う際は銅板用の鋏を使わないと思わぬところに歪みが出たりしますので、やはり専用品が良いでしょう。
金切鋏に関して、行きつけの板金材料取り扱いのプロショップに相談してください。
良い道具を手に入れることがプロの流儀です。
参考になりましたでしょうか。
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参考文献・抜粋
株式会社盛光 総合カタログ
日立金属株式会社 WEBサイト(http://www.hitachi-metals.co.jp/)