雨仕舞はとにかく下から上に作業をしていくものです。
水は重力に従って流れ落ちるため、この順序を守らなければどんどん裏側に水が回ってしまいます。
下から上に葺き上げる
外壁の場合も同様に下から上に板金を重ねていく手順となります。
非常にシンプルな考え方ですので、仕上がりの見た目を優先してこの原則を外してしまわないようにすることが大切です。
また当然ながら屋根本体を葺いてから下葺き材を下に敷くことはできませんので、勾配方向のみならず積み上げる順序も下から上となります。
役物も先に納めるものと後から納めるものと順序があります。
1.下葺
2.軒先の水切り
3.ケラバの水切り
4.壁際の捨谷または捨雨押、谷など急所となるところの納め
この順で準備ができたら屋根本体を葺き上げていくことになります。
上の絵はわかりやすいよう屋根本体をイメージした絵となっていますが、ケラバや壁抑え、隅棟など勾配のある部分の役物の納めも同様に下から納めて行きます。
屋根には勾配が必要
そもそもなぜ屋根には勾配が必要なのでしょうか。
「RC造の大型ビルディングなどでは屋上はフラットではないか」
というご指摘もあろうと思いますが、そちらは「防水」という考えで施工しています。
雨仕舞と防水の違いは以下の記事をご覧ください
さて、前述した通り雨水は重力に従って流れて行きます。
逆に勾配がなければ流れ去る方向に重力が働かず、雨水がその場に滞ってしまうということになります。
もし、木材やコンクリートなど水が染みてしまう材であれば水が滞ることで材の中に浸水して裏側にまで浸透してしまいます。
それを抑えるために樹脂などでコーティングすることになるのですが、樹脂が経年や様々な要因で劣化すると結果染みてしまうことに違いはありません。
また、水が染みない金属の場合であっても長期に渡って水が滞ることで錆を発生して穴が空きますと当然水が入ってしまいます。
雨水には酸性雨などと言われるように空気中の酸性物質を含んだり、海沿いでは海風に含まれる塩分も含んでしまいます。
水が滞留することで材料の劣化を進ませるだけでなく、それら酸や塩分を含んだ水分が蒸発することで滞留した水に含まれる酸や塩分が濃縮されて異常に濃度が高まる恐れもあります。
勾配がないと雨が降る度にこの濃縮が進行し、益々屋根の材料を侵蝕していくことになるのです。
当然勾配があっても多少の水分が屋根面に残って蒸発濃縮された成分が残ることはありますが、次の雨が降った際に勾配によって水で流されますので濃縮成分の濃度が増えていくことはありません。
重力で自然と水が流れ去ることで、雨漏りを防止するのみならず建物の劣化も防ぐことができるのです。
まとめ
以上かんたんですが勾配屋根の葺き方と機能、おわかりいただけましたでしょうか。
茅葺き屋根のように一見水が染みていってしまいそうであっても、実際ちょっとずつ染みてはいるのですが、茅葺きの分厚い層のなかで徐々に軒先まで落とせているのも勾配があるのと「下から上に葺き上げる」から。
金属屋根であればそもそも染みませんし、板金加工性により横に零れたりしないような形状を作成できます。
屋根を葺くなら金属板金材料をオススメいたします。
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